タイムラプス撮像法による受精卵・胚培養
タイムラプスインキュベーターは、受精から胚盤胞まで、インキュベーターの中から受精卵を取り出すことなく経時的に一定の間隔で胚の観察ができる装置です。培養環境で特に重要なのは温度と培養液内のpHの安定です。それらを安定化するには扉の開閉の回数を減らし、気層の酸素濃度、二酸化炭素濃度、窒素濃度と温度が設定範囲内で維持されることが大切です。
従来の観察では観察毎にインキュベーターの中から胚を取り出して空気中で観察しその後、再びインキュベーターに戻すという作業があり、これが胚の発育に負担をかけていました。また個々の胚で発育速度や質が異なります。この装置を使用すると、遡って記録を確認できるのでより詳細な発育過程が確認でき、良好胚を選ぶのに有効な情報がえられます。

PICSI(ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術)
正常な成熟精子は卵子と受精するため卵丘細胞複合体に存在するヒアルロン酸に結合するための因子が発現しています。この因子が発現している精子はDNA断片化の割合が低いことが報告されています。
PICSI (Physiologic intracytoplasmic sperm injection)はヒアルロン酸を塗布したディッシュに精子を泳がせ、ヒアルロン酸に結合する成熟精子を選別し、顕微授精に用いる技術です。

IMSI(強拡大顕微鏡を用いた形態学的精子選択術)


IMSI (Intracytoplasmic morphologically selected sperm injection)とは、超高倍率で精子を観察し、形態が良好な精子を選別し顕微授精(ICSI)に用いる方法です。
通常のICSIでは最大400倍に拡大して精子を選びますが、当院ではIMSI用対物レンズを用いることで1000倍まで拡大して精子を観察することができます。これにより、精子の形態(頭部の空胞や中片部・尾部の異常など)をより正確に評価し、良好な精子を選別することができます。
Zymot(膜構造を用いた生理学的精子選択術)
Zymotスパームセパレーターでは、特殊なフィルターを泳いで通過した運動精子を回収します。Zymotを使用することにより、物理的な負担をかけずに運動精子を回収でき、より良い精子(精子DNA断片化率が低い運動精子)を受精に使用することができると考えられます。
本法では精子回収量が少なく、顕微授精の適応となる可能性が高いです。


子宮内膜擦過術(子宮内膜スクラッチ)
子宮内膜擦過術、通称スクラッチ法は、体外受精などで良好な胚を移植しても妊娠に至らない方(反復着床不全)や、子宮内膜が薄い方に向けた治療法です。胚移植の前周期に、細いカテーテルで子宮内膜を軽く刺激(スクラッチ)することで、子宮内膜に軽い炎症が起こり、着床を助ける物質の分泌が促される、または子宮内膜の感受性が高まることにより、着床環境の改善を目的としています。
二段階胚移植 ※当センターでは自費診療(先進医療としては未申請)
胚と子宮内膜は、着床しやすくなるようにシグナル交換をしていると考えられています。
二段階胚移植はまず初期胚を子宮内に一つ移植し、胚の伝達シグナルを内膜に与えて着床しやすい状態にし、その2~3日後に胚盤胞を移植するという方法です。合計で2個胚移植するので、双胎のリスクが上がります。
SEET法 ※当センターでは自費診療(先進医療としては未申請)
SEET法(Stimulation of Endometrium Embryo Transfer)とは 子宮内膜刺激胚移植法のことです。 採卵周期に、胚盤胞培養を行った胚と培養液(SEET液)を別々に凍結保存しておき、融解胚移植周期で移植の2~3日前にSEET液を融解して子宮内腔に注入する治療法です。受精卵から出ているなんらかの伝達物質が子宮内膜に刺激をあたえ、着床しやすくなるのではないかと考えられています。